20ヶ月にわたる交渉で25日、1時間足らずの協議の末、ブレグジットと、ブレグジット後の英国との関係を定めた条件を正式承認し、2017年から始まったブレグジット交渉は一旦の終結を見ました。
内容に関しては
・以降期間は2019年3月29日に始まり、2020年12月31日に終了する
・以降期間中、英国はEUが定める全てのルールを順守する必要がある一方、EUの各機関からは離脱する
・合意案によると、以降期間は一回だけ、期限付きで延長することができる
・英国とEUは、2020年7月1日までにえんちょうの是非を決める必要がある
との内容です。
移行期間についての詳細は真新しいものではないのですが、ブレグジットの当日、イギリス政府が主導権を取り戻すとの内容を期待するところですが、内容をみると移行期間内の主導権は結局はEUが握っていることになり、一方で、欧州議会や欧州委員会、欧州司法裁判所からはイギリスは撤退しています。
イギリスはEUのルールや規則を新たに作ったり修正した居留守際に一切口出しすることができなくなるのですが、移行期間内であれば従う必要が出てきます。
もちろん移行期間内に速やかに政府が新しい体制を整えて円滑にEU離脱を進めることもできます。また、将来の関係性について交渉を進めている最中にも、安全保障といった重要な問題についてEUの持つデータベースに引き続きアクセスできるのも利点となります。
離脱のための金銭問題
合意案には、英国がEUに対して持つ責務を決着させるための金銭的な和解金の計算も盛り込まれています。
書面確認したところ、具体的な数字はなかったみたいですが、少なくとも390億ポンドとなる見込みで、数年かけて支払われます。
清算金の一部は、以降期間中に英国がEUに対して行う支出となります。たちまちのところ今年のEU予算に対する拠出金は108億ポンドとなると見られています。
もし、移行期間が延長された場合は、EU予算への英国の拠出も追加され、期間延長と追加拠出は再び協議し、合意する必要が出てきます。
金銭的な問題はEU離脱派にとって、貿易関係の保証がない限り、巨額の清算金を支払いたくないと考えているみたいで、今後も引きずりそうな問題となりそうです。
もし、イギリスが支払いを拒否すれば、さらにEUとの関係はこじれて、最悪の場合裁判沙汰となる可能性もあるかもしれません。
北アイルランドとの問題
・2020年末までにアイルランドと英国・北アイルランド国境に管理体制をしかない長期的な通商協定がまとまらず、以降期間も延長されなかった場合、EUと英国館の単一関税区域を設置するバックストップ(防御策)が発動します。
・バックストップが施行されれば、北アイルランドは英国のその他の地域よりも強い関税関係でEUと結ばれます。また、EU単一市場のルールや規則により足並みを揃えることになりそうです。
・バックストップの施行中、英国はEUと同じ関税区域の中にありながら競争で有利な立場を得ないよう「平等な立場の条件」に置かれることになります
・英国は勝手にバックストップを離脱できず、EUと協議して決める必要があります。
単一関税区域は一般的な関税同盟の別名で、もしこれが必要となれば、アイルランドとの国境では自由貿易が続くことが保証されます。
しかし、一方で、イギリスは世界各国と関税撤廃を含む通商協定を結ぶことができなくなります。
これがブレグジット支持派が問題にしている件で、特にEUの承認がない限りバックストップから離脱する手段が保証されてない点が離脱派が怒っている元となっています。
アイルランドと北アイルランドの問題についての規定に関しては、合意案でももっとも長く交渉が行われていた部分でもあり、公表された今では、多くの閣僚の辞任を招く原因となっています。
イギリス領海でのEU加盟国の漁業
合意案では英国領でのEU加盟国の漁業については、別の合意が必要だと定められています。
合意案によると、EUと英国は領海へのアクセスと漁業の機会について、最大限の度量区を持って合意の取りまとめと批准を行うものとするとされています。
漁業関係は常に、経済関係ほとんど関わり合いがない国家間でも摩擦のタネとなります。
EU漁船が英国の漁業水域へのアクセスを保証されないまま英国の水産物がEU市場に並ぶのは認められないとしたため、漁業に関する協定は単一関税区域から外されています。これは、関税同盟に関する交渉が複雑化する原因の一つとなりました。
そして、今後の通称協議をめぐる交渉がいかに厳しいものになるかを考える一例ともなりそうです。
法律と紛争問題
・移行期間中、英国は欧州司法裁判所の管轄下にとどまります。
・離脱合意の解釈をめぐる紛争については、英国とEUで共同委員会を設置して解決します。
・バックストップが発動し、英国がEUと単一関税区域を形成した場合、欧州司法裁判所は、英国とEUの紛争を直接的に解決できなくなります。
・代わりに、あらゆる紛争解決の手続きは仲裁委員会によって裏付けがなされますが、EU法の解釈をめぐる紛争の場合は、仲裁委員会は欧州司法裁判所に決定を委ねる方針です。
紛争解決のためのこの欧州司法裁判所に委ねる仲介システムは、うわべだけの独立を作るが、以降期間が終われば欧州裁判所は英国に直接的な影響を及ぼさなくなります。
これはイギリス政府にとっては重要な点ですが、欧州司法裁判所は今後も間接的な影響はイギリスに及ぶだろうとの見方です。
このEUが承認した合意文書は、この後、イギリス議会での承認を得る必要があります。
メイ首相もイギリス国民も、これ以上ブレグジットの議論に時間を費やすのはうんざりの空気感が漂ってきています。
英議会は12月12日に今回の離脱合意について議決する予定ですが、その可否は不透明で、野党が反対する予定のほか、与党内でも多くの議員が反対する見通しで、下院が合意を否決した場合は、合意なしのブレグジット、再交渉の模索か解散総選挙かなどいくつかの展開が可能性として出てきます。
EUでの承認に至ったからといっていまだにポンドが買われていない理由はここにあり、まだまだ不安定な状況は続きそうなため、今後のニュースにも警戒が必要です。
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