激化する香港情勢と中国の動向

20日の為替市場では、米議会上院が香港人権法案を全会一致で可決したことに対して中国が猛反発し、米中貿易協議の行方に新たな火種浮上という状況の中での取引となり、リスク回避的な円買いが見られました。
その後、ニューヨーク時間からは、日米株価指数が下げ渋ったことなどを手がかりに、ショートカバーが入り、ドル買いが先行しています。

中国はなぜ香港にこだわるのか

逃亡犯条例改正案に反対する6月9日のデモから始まった大規模な暴動が続いています。
香港行政長官は9月4日に逃亡犯条例改正案撤回という譲歩を見せましたが収束しないデモは何を求めているのか、中国がなぜ香港をいっせいに鎮圧しないのか少しまとめてみました。

今回のデモでの最終的な要求

中国と香港政府にとって問題となっているのは、デモが体制選択を求めていることです。
今回のデモの最終的な要求は行政長官の普通選挙。選挙システムを変えるには、中国の全人代(国会に当たる場所)の承認が必要です。しかし、その可能性はほぼゼロに等しい。
デモ側もそこら辺は把握していて、国際金融センターとしての香港の地位を破壊することで、香港の親中派既得層や北京政府へ打撃を与えることを狙っていて、捨て身の特攻作戦と化しています
香港でのデモが過激化する一方で中国政府は武力での制圧をちらつかせていますが、実際それを実行する可能性は極めて低い感じです。
中国にとって一国二制度は維持しなければいけない理由があり、その最大の理由は国際金融センターとしての香港の地位維持にあります。

中国にとっての香港

香港には中国本土にはない、表現の自由や、独立した司法があるからこそ、アメリカは中国製品に課している関税を香港には適用しない優遇措置をしており、もし中国が干渉し、アメリカがこの優遇措置を見直すことになると中国経済に大きな打撃となります。
他にも、中国は香港の通貨、株式、再建市場を利用して、外貨資金を稼いでいます。外国企業も香港を中国大陸に進出する足がかりとしていて、外国から中国への直接投資の大半は香港経由で行われています。
また、中国の資金調達の半分は、香港市場に上場した企業を通じています。
外貨経済だけでなく、共産主義の中国では政治的検閲のハードルが高く中国の学者や研究者の論文や文学・小説は香港と台湾で出版するケースが多く見られます。
以上のことから、中国にとっての香港は、共産主義と資本主義の汽水域みたいなもので、経済的に弱体化していても、中国にとってはなくてはならない場所なのです。

混乱が続く香港問題で、中国内政へのアメリカ介入は容認できないが、米中関係を安定させなければ経済発展に悪影響がでるため、経済をとるのか政治をとるのか、難しい選択を迫られている中国と、次の選挙に向けて積極的に動くアメリカと、双方の政治経済をめぐる大きな問題となっているため、どちらも妥協はできず、泥沼化しています。

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